行政手続法の学習において、最もボリュームがあり、かつ試験で得点源になるのが「処分」の手続きです。
前回学んだ「申請」と「不利益処分」の区別をベースに、今日はそれぞれの具体的な「流れ(プロセス)」を一緒に追いかけていきましょう。
この記事が参考になる方
- 申請から処分までの流れを、具体的かつ視覚的に理解したい方
- 「聴聞」と「弁明の機会の付与」の細かな違いを整理したい方
- どの手続きが「義務」で「努力義務」かを一表で確認したい方
特に不利益処分は、肢別過去問でも問題数が多く、細かい数字や「主宰者」などのキーワードが飛び交います。戦友として、一つずつ紐解いていきましょう!
肢別過去問チェック:本日の問題
行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではない。
【答え】 ◯(正しい)
答えの考え方:不利益処分は「理由」が命
不利益処分は、相手にとって「営業停止」や「免許取り消し」といったダメージがあるものです。だからこそ、「なぜそんな酷いことをするのか」という理由の提示は、原則として処分と同時に行う義務があります。
ただし、緊急で差し迫った必要がある時だけは後回しにできますが、その場合も、処分後に相手から求められたら、相当の期間内に示さなければなりません。
申請に対する処分のタイムライン
まずは、私たちが行政に「〜を許可してください」とお願いする「申請」の流れです。
具体例:キッチンカー(移動販売)の営業許可申請
【申請プロセスのイメージ】
① 審査基準の策定・公表(事前にハードルを公開)
↓
② 申請(書類が窓口に到達)
↓
③ 審査開始(標準処理期間の目安に沿って進む)
↓ ※必要に応じて「公聴会」を開催
④ 処分(許可 or 拒否 + 理由の提示)
各ステップのポイント
- 審査基準(義務):あらかじめ「どんな条件ならOKか」を決めて、誰でも見られるようにしておく必要があります。
- 標準処理期間(努力義務):「だいたい1ヶ月で審査します」という目安を決めるよう努めなければなりませんが、あくまで努力目標です。
- 公聴会(任意):大きな開発許可など、周りの住民の意見を聞く必要がある時は「公聴会」を開くことができます。
- 理由の提示(義務):もし「拒否」されたなら、なぜダメなのかを教えなければなりません。
不利益処分のタイムライン
次に、行政から一方的に「おしおき」が下される「不利益処分」の流れです。
具体例:賞味期限偽装による「10日間の営業停止処分」
【不利益処分プロセスのイメージ】
① 処分基準の策定(役所内部の「おしおき目安」)
↓
② 事前の通知(「あなたを処分する予定です」という予告)
↓
③ 意見陳述手続(「言い分を聞くチャンス」:聴聞 または 弁明)
↓
④ 処分決定(営業停止 + 理由の提示)
各ステップのポイント
- 処分基準(努力義務):不利益処分はケースバイケースな面が強いため、基準を作るのは「努力義務」に留まっています。ここ、審査基準(義務)とのひっかけで超頻出です!
- 理由の提示(義務):冒頭の問題通り、原則として処分と同時に行います。
3. 徹底比較:聴聞 vs 弁明の機会の付与
不利益処分をする前に、相手の言い分を聞く「意見陳述手続」には2種類あります。重い処分なら「聴聞」、軽い処分なら「弁明」です。
| 項目 | 聴聞(ちょうもん) | 弁明(べんめい)の機会の付与 |
| 対象 | 許認可の取消しなど重い処分 | 営業停止、過料など比較的軽い処分 |
| 形式 | 口頭(ライブ形式の審理) | 原則として書面(提出して終わり) |
| 主宰者 | 行政庁が指名した職員が仕切る | 仕切り役(主宰者)はいない |
| 文書閲覧 | 処分の原因となる資料を見せてもらえる | 文書の閲覧請求はできない |
| 代理人 | 選任できる | 選任できる |
初学者の覚え方ポイント:
「聴聞(ちょうもん)」は、相手の人生を左右する大事件(免許取消しなど)なので、ドラマの裁判シーンのように、資料を見ながら直接話し合うイメージです。一方の「弁明」は、「言い訳を紙に書いて出してね」という簡略版です。
4. 義務か、努力義務か?総まとめ表
肢別過去問で最も点数を削りに来るのがここです。表でパシッと整理しましょう!
| 項目 | 申請に対する処分 | 不利益処分 |
| 基準の設定 | 義務(審査基準) | 努力義務(処分基準) |
| 基準の公表 | 義務 | 努力義務 |
| 期間の設定 | 努力義務(標準処理期間) | - |
| 理由の提示 | 義務(拒否した時) | 義務(処分と同時) |
| 公聴会 | 任意(利害関係人の参加) | - |
戦友メモ:
審査基準(申請用)は国民が準備するために絶対必要だから「義務」。 処分基準(おしおき用)は、悪知恵を働かせる人が出るかもしれないから、あえて伏せてもいい「努力義務」。
こう考えると、なぜ義務と努力義務に分かれているのか腑に落ちますよね!
5. 【重要】記述式対策フレーズ
今回の範囲から、40字記述で狙われやすいポイントを2つピックアップしました。
①審査基準の公表について
Q:行政庁は、申請に対する審査基準についてどのような義務を負っているか?
A:審査基準を定め、かつ、行政上特別の支障があるときを除き、これを公表しなければならない。(45文字)
②不利益処分の理由提示について
Q:不利益処分をする際、処分の理由を提示するタイミングとその例外について書け。
A:処分と同時に示さねばならないが、差し迫った必要がある場合は処分後に示せば足りる。(41文字)
どちらも「キーワード(同時、公表、特別の支障など)」を抜かさないように練習しましょう!
次回予告
次回は、行政手続法の残りのパーツ、「行政指導・届出・命令等制定手続(パブリックコメント)」を一気に解説します。
ここまで終われば行政手続法は完了です。最後まで一緒に走り抜けましょう!
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