前回の「行政行為」は行政の強力なパワーでしたが、今回はそれ以外の「行政の活動スタイル(行政作用)」を一気に整理します。これらは、実社会でもよく耳にする言葉ばかりですが、試験では「法律の根拠が必要か?」という点が厳しく問われます。一緒に学んでいきましょう!
この記事が参考になる方
- 行政立法や行政指導など、似たような用語の区別に苦戦している方
- 「行政指導で裁判はできないのに、賠償請求はできる」という矛盾を解消したい方
- どの行政作用に「法律の根拠」が必要なのか、表でパッと確認したい方
行政法は、一つひとつの型(作用)をバラバラに覚えるのではなく、比較して覚えるのが合格への近道です。
肢別過去問チェック:本日の問題
行政指導は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであるから、その指導が違法であり損害が生じたとしても、国家賠償法上の「公権力の行使」には当たらない。
【答え】 ×(誤り)
答えの考え方:裁判はできなくても「賠償」はできる?
ここ、私も今日勉強して「えっ?」と思ったポイントです。整理するとこうなります。
- 抗告訴訟(取り消し訴訟など)の対象にならない理由 行政指導はあくまで「お願い」であり、従うかどうかは自由です。法的にあなたの権利を直接縛るものではない(処分性がない)ので、「その指導を取り消せ!」という裁判は、原則としてできません。
- 国家賠償(損害賠償)ができる理由 裁判はできなくても、現実に「公務員が仕事として行った指導」によって、あなたが損害を受けたなら話は別です。国家賠償法における「公権力の行使」という言葉は、実はかなり幅広く解釈されます。たとえ「お願い」であっても、行政が仕事として動いている以上、そのやり方が違法で実害が出れば、賠償を求めることは認められるんです。
「取り消せという訴え(抗告訴訟)」と「損害を払えという訴え(国家賠償)」は、土俵が違う別物だと考えるのがコツですね。ここを切り分けると、一気に視界が開けます!
行政作用5つの「法律の根拠」比較マスター
読者の皆さんも一番気になる「これって法律や条例が必要なの?」という点をまとめました。ここを比較して覚えるだけで、過去問の正答率がグッと上がります。
| 行政作用の型 | 法律の根拠(法律の留保) | 独学初学者のチェックポイント |
| 行政立法 | 必要(法規命令) | 国民の権利を縛る「法規命令」には具体的な委任が必要。 |
| 行政計画 | 原則不要 | 街の将来像を描くだけなら自由。権利を縛る計画は例外。 |
| 行政契約 | 不要 | 行政も対等な立場で契約するだけ。条例や合意でOK。 |
| 行政指導 | 不要 | あくまで「お願い」。ただし法律の目的範囲内であること。 |
| 行政調査 | 必要 | プライバシーに踏み込むため、必ず法律の根拠が必要。 |
- 行政立法 法律の根拠が必要(法規命令の場合)。国民の権利を縛る「法規命令」には、必ず個別の法律の具体的な委任(指示)が必要です。役所が勝手にルールを作ることはできません。
- 行政計画 原則として法律の根拠は不要。街の将来像を描くだけなら自由です。ただし、土地区画整理のように、私たちの財産権を直接縛るような計画には、個別の法律の根拠がいります。
- 行政契約 法律の根拠は不要。行政も私たちと同じ立場で「契約」するだけ(水道の供給など)なら、法律の根拠はなくても条例や合意で進められます。
- 行政指導 法律の根拠は不要。あくまで「お願い」なので、法律の根拠がなくても行えます。ただし、「個別の法律の目的範囲内」である必要があります。
- 行政調査 法律の根拠が必要。人の家に立ち入ったり書類をチェックしたりするのは、プライバシーや権利に関わるので、必ず法律の根拠が必要です。
各作用の「事件名」と「リーガルマインド」を脳に刻む
試験に出る判例を、初学者の私たちがイメージしやすいストーリーで整理しました。
武蔵野市マンション教育施設負担金事件(最判平5.2.18)
市がマンション業者に「教育施設のためにお金を寄付してね」という計画・指導を行った事件です。
- 結論:指導に従わないからといって、水道の供給を拒否するような強引なやり方は違法とされました。
- 考え方:たとえ法律の根拠が不要な「行政指導」であっても、相手の自由な意思を無視して「事実上の強制」をするのは、行政のやりすぎ(限界を超えている)と判断されます。
監獄法施行規則事件(最判昭63.7.15)
法律の委任がないのに、役所のルール(省令)で「弁護士以外との面会を禁止」した事件です。
- 結論:このルールは無効とされました。
- 考え方:国民の自由(面会の自由)を制限するには、必ず「法律」による具体的な指示が必要です。法律に書いていない厳しいルールを、役所が勝手に作ってはいけない、という民主主義の基本ですね。
記述式対策:行政指導の中止等の求め
もし、法律に違反するようなしつこい行政指導を受けたとき、私たちができる対抗策を40字で暗記しましょう。これは近年追加された超重要項目です。
Q: 法律に違反する行政指導の中止を求める際、誰に対して、何をすべきか? A: 当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、行政指導の中止を求める。(38文字)
この「中止等の求め」という言葉を正確に書けるようにしておきましょう!
行政法の深掘り:条例と法律のパワーバランス
「条例(地域のルール)」と「法律(国のルール)」のどっちが強いのか、これも悩みどころですよね。 基本的には、「法律の範囲内」であれば条例でルールを作ることができます。 法律が「AまではOK」と言っているときに、条例で「いや、うちの町はもっと厳しくAもダメにする!」と上書きすることは、法律がそれを禁止していない限り、認められることが多いです。地域ごとの実情に合わせる、という柔軟な考え方が行政法にはあります。
次回予告
次回は、行政が義務を守らない人に対して行う強制手段、「行政上の強制措置(強制執行・即時強制)」を一緒に攻略しましょう!「代執行」や「執行罰」など、言葉はイカついですが、中身を整理すれば実は得点源になる分野です。
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