【行政法・第6回】その「許可」はどっち?行政作用の類型をマスターせよ

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この記事がお役に立てる方

  • 「下命・禁止・許可の違いなど、行政作用の類型を正確に整理したい」という方
  • 「準法律行為的行政行為(確認・公証・通知・受理)の中身を詳しく知りたい」という方
  • 「付款(ふかん)を付けられる行為と、付けられない行為の差を理屈で理解したい」という方

行政庁が行った処分に手続き上の不備(瑕疵)があった場合、後からその不備を補ったとしても、その処分の効力が有効になることはない。

(答え:×)

躓きポイント:難しい言葉「瑕疵の治癒」を噛み砕く

具体的な類型に入る前に、私が勉強を始めたばかりの頃に「えっ、何これ?」と躓いた言葉を共有させてください。それが「瑕疵(かし)の治癒(ちゆ)」です。

漢字だらけですが、要は「役所のうっかりミス(瑕疵)を、後からやり直して治す(治癒)」ということです。 原則として、ルールに違反した処分は「違法」ですが、後から不足していた手続きを補った場合、わざわざ一度出した処分を白紙に戻して最初からやり直すのは非効率ですよね。そのため、例外的に「後から直したから、この処分は有効なものとして扱っていいよね」と認められることがあります。

肢別過去問で「いかなる場合も有効にならない」という極端な選択肢が出たら、この「治癒」の可能性を思い出して×をつけましょう。


行政作用の類型と「行政行為」の体系

役所のアクション(行政作用)の中で、最も試験に出るのが「行政行為」です。これは大きく分けて「法律行為的」と「準法律行為的」の2つに分類されます。

① 法律行為的行政行為(役所の意思が反映される)

役所が「こうしよう」という意思表示を要素とする行為です。

  • 命令的行為: 本来の自由を制限したり、回復させたりする。
    • 下命(かめい): 作為義務(掃除しろ)や給付義務(税金払え)を課す。
    • 禁止(きんし): 不作為義務(営業するな、建てるな)を課す。
    • 許可: 法令による一般的な禁止を、特定のケースで解除する(例:飲食店営業許可)。
    • 免除: 下命によって課された義務を消滅させる。
  • 形成的行為: 私人が本来持っていない特別な権利や資格を作り出す。
    • 特許: 新たな権利・能力を与える(例:河川占用許可、公務員の任命)。
    • 認可: 私人の契約(法律行為)に役所が同意を与えて完成させる(例:銀行業の免許)。
    • 代理: 本来本人がやるべきことを役所が代わりに行う(例:土地収用での裁決)。

② 準法律行為的行政行為(役所の意思は関係なく、法律が効果を決める)

役所の主観的な意思ではなく、一定の「判断」や「認識」を示す行為です。

  • 確認: 特定の事実や法律関係について、争いがある場合に公に判断すること(例:当選人の決定、建築確認)。
  • 公証: 特定の事実を公に証明すること。争いがない場合が多い(例:住民票への記載、選挙人名簿への登録)。
  • 通知: 特定の事項を相手方に知らせること(例:納税の催告)。
  • 受理: 相手方の届出を有効なものとして受け取ること(例:婚姻届の受理)。

行政行為の「付款(ふかん)」:なぜ「準」には付かないのか?

「許可は出すけど、〇〇という条件を守ってね」というおまけの条件が付款です。

  • 種類: 期限、条件、負担、撤回権の留保、法律効果の一部除外。
  • ※重要ポイント: 付款は役所の「意思」によって付けられるものです。そのため、法律によって効果がガチガチに決まっていて役所の意思が入らない「準法律行為的行政行為」には原則として付けることができません

【最頻出】「取消し」と「撤回」の仕分け術

肢別過去問で最も狙われるのが、この2つの違いです。「ミスのタイミング」で見分けます。

  • 取消し(最初からダメ): 処分を出した最初から、内容や手続きにミスがあった場合。
    • 効果: 処分時にさかのぼって(遡及して)効力がなくなります。
  • 撤回(後からダメ): 出した時は正しかったが、その後で事情が変わった場合。
    • 例: 運転免許(公証)を取った後に、飲酒運転をした。
    • 効果: 将来に向かってのみ、効力がなくなります。

行政裁量:役所の「自由度」の境界線

法律に「〇〇できる」とある場合、役所には判断の自由(裁量)があります。

  • 逸脱(いつだつ): 法律の枠組み(外限)をはみ出すこと。
  • 濫用(らんよう): 枠内だが、中身が著しく不当(平等原則違反や他事考慮など)なこと。

これらはまとめて「裁量権の逸脱・濫用」と呼ばれ、裁判所で取り消しの対象になります。


【記述式対策】重要キーワード

  • 撤回: 処分後に発生した事由に基づき、将来に向けて効力を消滅させること。
  • 裁量権の逸脱・濫用: 行政庁の判断が社会通念に照らし、著しく妥当性を欠くこと。

理解を深めていくために:行政行為が持つ「魔法」の力

行政行為には、普通の契約にはない特別な力が備わっています。その代表が「公定力(こうていりょく)」です。

たとえ役所の処分が間違っていても、正式に取り消されるまでは、私たちは「これは有効だ」として従わなければなりません。これは、役所の決定がすぐにひっくり返ると社会が混乱してしまうからです。

「役所は公定力という強力な魔法を使える。だからこそ、私たちはその魔法が暴走しないように、監視していく必要があるんだな」と考えると、単なる用語の暗記も少し実感を伴ったものになるはずです。


【次回の予告】行政の「ルール作り」と「現場のアクション」

次回は、以下の5つの重要トピックを一気に扱います!

  1. 行政立法: 役所が自らルールを作るとき(法規命令と行政規則)
  2. 行政計画: 街づくりなどの長期的なビジョン
  3. 行政契約: 役所が私たちと対等な立場で結ぶ契約
  4. 行政指導: 「お願い」ベースのソフトな働きかけ
  5. 行政調査: 実態を調べるための立ち入り検査など

特に、私たちの生活に直結する「行政立法」と、トラブルになりやすい「行政指導」には注力して解説します。お楽しみに!

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