行政不服審査法の学習において、最も出題頻度が高く、かつ実務でも重要なのが「審査請求」です。
「文句を言う」といっても、ただ感情的に訴えるだけではありません。ルールに則って、適切なタイミングで、適切な相手に申し立てる必要があります。
この記事が参考になる方
- 審査請求中に「処分を止めたい(執行停止)」時の条件を知りたい方
- 審査庁によって「処分の変更」ができたりできなかったりする理由を納得したい方
- 期間や当事者適格など、門前払いされないための要件を整理したい方
今日は、私が理解に苦しんだ「なぜ変更できない審査庁がいるのか?」という組織のパワーバランスについても、スッキリ解説していきます!
肢別過去問チェック:本日の問題
審査庁が処分庁以外の行政庁である場合、審査請求に理由がある(不当・違法である)と認めるときは、審査庁は自ら当該処分の内容を変更することができる。
【答え】 ×(誤り)
答えの考え方:他人の仕事は勝手に書き換えられない
審査請求が認められた場合(認容裁決)、処分を「取り消す」ことはどの審査庁でもできます。しかし、内容を「書き換える(変更)」となると話は別です。
自分(処分庁)か、その上司(上級行政庁)なら変えられますが、それ以外の「第三者的な審査庁」は、他人の権限を勝手に奪うことになるため、変更まではできないのです。
審査請求の「門番」:適法に申し立てるための要件
審査の内容に入ってもらう前に、まずは「形式」が整っているかチェックされます。ここで落とされると「却下」されてしまいます。
① 正当な当事者(審査請求人適格)
誰でも文句を言えるわけではありません。「法律上の利益」がある人、つまりその処分によって自分の権利が直接侵害された人だけが主役になれます。
② いつまでに?(期間)
ここ、数字の暗記が必須です!
- 主観的期間:処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内。
- 客観的期間:処分があった日の翌日から1年以内。どちらか一方が過ぎるとアウトです。「知ったか、あったか」を入れ替える問題に注意しましょう。
③ 教示(きょうじ)のルール
行政側には「文句があるならここへ言ってね」と案内する義務があります。この案内が間違っていたり、なかったりした場合、期間を過ぎても受け付けてもらえるなどの救済があります。
審査中の大問題:執行不停止の原則と「執行停止」
「営業停止処分」に対して審査請求をしたとします。審査には時間がかかります。その間、お店は閉めなきゃいけないのでしょうか?
原則:執行不停止
行政不服審査法では、**「文句を言っても、処分は止まらない」のが大原則です。公共の利益を優先するため、まずは処分をそのまま進めます。
例外:執行停止
しかし、それでは審査が終わる頃にお店が潰れてしまうかもしれません。そこで「一旦ストップ!」をかけるのが執行停止です。
| 審査庁の立ち位置 | 執行停止のルール |
| 上級行政庁 | 申立てがなくても、職権(自分の判断)で止められる。 |
| 処分庁自身 | 申立てがなくても、職権で止められる。 |
| それ以外 | 申立てがあった時に、処分庁の意見を聞いた上で止められる。 |
重要キーワード:「重大な損害」
執行停止をするには、「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」と認められる必要があります。後に学ぶ「行政事件訴訟法」では「回復困難な損害」という言葉が出てくるので、今のうちに「不服審査は『重大』な損害」と脳に刻んでおきましょう!
審査庁の権限:なぜ「変更」の可否が分かれるのか?
審査が終わり、「確かにこの処分は違法(不当)だ!」と認められた時の「勝ち(認容裁決)」の内容についてです。
認容裁決の3パターン
- 取消し:処分を白紙に戻す。(全審査庁OK)
- 撤廃:将来に向かって効力をなくす。(処分庁・上級のみ)
- 変更:処分の内容を書き換える。(処分庁・上級のみ)
なぜ「それ以外」の審査庁は変更できないの?
今日の問題でも書きましたが、ここが私の最大の疑問でした。理由は「行政のナワバリ(権限)」にあります。
例えば、保健所が出した処分を、全然関係のない第三者機関が勝手に「10日の停止じゃなくて3日に変えるね」と書き換えてしまうと、保健所が持っている「判断する権利」を奪うことになってしまいます。
「白紙に戻す(取消し)」までは監督責任として認められますが、「内容を書き換える(変更)」のは、自分自身か、その組織をコントロールできる上司(上級行政庁)にしか許されない特権なのです。
【重要】記述式対策フレーズ
不服審査法から狙われやすい記述ポイントを2つ押さえましょう。
① 執行停止の要件
Q:審査請求において、審査庁が執行停止をしなければならないのはどのような場合か?(公共の利益等を除く)
A:重大な損害を避けるため、緊急の必要があると認めるとき。(27文字)
② 不利益変更禁止の原則
Q:審査請求に対する裁決において、審査庁が守らなければならない不利益な変更に関するルールとは?
A:審査請求人の不利益に当該処分を変更し、または当該事実を命ずることはできない。(38文字)
※「文句を言ったら、元よりひどい処分にされた」ということがあってはならない、という超重要ルールです。
【試験あるある】見落としがちな頻出ワード
1. 「重大な損害」vs「回復困難な損害」
先ほども触れましたが、不服審査法=重大、訴訟法=回復困難。
「不服審査法において、回復困難な損害を避けるため…」という肢が出てきたら、即座に×をつけられるようにしましょう。
2. 再調査の請求との自由選択
「審査請求」と「再調査の請求」ができる場合、どちらを先にやってもいい自由選択が原則です。ただし、再調査をしている間でも、3ヶ月経っても結果が出ない時などは、審査請求に「ジャンプ」できるというルールもセットで覚えましょう。
次回予告
次回は、行政事件訴訟法に突入!4つの訴訟類型と「取消訴訟」の基本について詳しく見ていきます。
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